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サーフィンと怪我とメンタルの関係[ミックのディベート第10回]-F+(エフプラス)

Text by つのだゆき

2週間の隔離を経て、めでたくオーストラリアレッグはスタートしている。シーズン2戦目のニューキャッスル。ローカルのライアン・カリナン快進撃。まぁ、思った通りの波だし、あれでもいい日を選んだほうなわけで、やっぱなぁ、あの波でCTもビミョーではある。皮肉なことにベルズではとてもいい波で、気温35度、4-5フィートのパーフェクトウエイブのイースターだと現地の友人から電話で聞いた。

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ライアン・カリナン PHOTO: © WSL / Dunbar

まぁ、でもあの波でもうまい人はうまいというか、どんな波でもターンのひとつひとつがのびやかだよね、うまい人は。止まらない。私は個人的にこのサーフィンののびやかな感じというのはもっと評価されるべきだと思ってるんだけどね。パンピングの音がするようなサーフィンはうるさいし、優雅ではない。なめらか、のびやか、その優雅さの裏にどれだけハードなレールコントロールがあるかを考えてほしいんだよ、結果として同じクオリティのリップでも。
とはいえ、まるで他人事のように思えるオーストラリアレッグ。外国との距離感って、たぶん今のほうが正しいんだと思う。実際遠い異国での出来事なわけだから。

さて、今回はミックとセレマ・マサケラのディベート。セレマはアメリカのスポーツコメンテイターでサーフィンもする。ずいぶん前からシーンのまわりにいるひとり。
確か最初はトランスワールド系のアクションウェブコンテンツでキャスター役だったんじゃないかな。当時はサル・マサケラって紹介された覚えがある。

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1:試合会場にコーチの同行は必要か否か


セレマは「必ずしも必要ではない。コーチ不在でアスリートがひとりになったときにどうなるのかも興味深い」という意見。

ミックは、「ビーチから見るのと海の中で見るのでは状況が違うことがよくあるので、誰かがビーチにいるほうがいいと思う。でもそれがコーチじゃなく友人とかでもいいと思う。実際友人と試合に行くほうがずっと楽しいし」と笑った。

セレマは、「今までずっと家族と試合を共にしていたガブリエル・メディーナがひとりになってどうするか見てみたい。まぁ、子供やジュニアならまだしも、ワールドツアーレベルのサーファーでコーチがその場にいないとダメってのはないと思う」と加えた。

私はテニスでコーチがコートサイドに入れないのと同じように、サーフィンでもコーチは沖に一緒に行けない(ボードキャディが認められている会場は別)わけだし、基本個人スポーツなので、パドルアウトしたらひとりでやるべきかな、と思う。セレマも言ってたけど、ビーチから指示出したりっていうのは、必ずしも必要ではないと思う。それに頼らないと勝てないようではダメ。だってこういうとき(コロナルールでコーチが同行できない)には勝てないことになっちゃうので。

2:レベルアップのために、海での練習ではなく、陸では何が必要か


セレマは「自分をレベルアップするためのエナジーとスペース」。つまり、努力と思考とでも訳すべきか。

ミックは「マインドフルネス」。気づきとか目的に向かっての意識の集中とかだろうか。
「10位ぐらいにいるところからどうやってタイトルを取りに行くかを考えたときに、まずは自分の心をよく知る、自分は何で火が付くのか、何でキレるのかを探ることが必要」だと。無意識の意識を知る、ですか。さすがミック。試合はキレたら負けだし、冷静さを保つことが勝ちにつながるしね。

そうね、深層意識、思い込みっていろんなことに影響するからね。できない、って思ったらどれだけ練習してもできないし。最終的にあなたの肉体に指令を下すのはあなたの脳なんでね、脳みそができないって思ってたらできないのよね。コーチってのは、この「できない」って意識をなだめてすかして変えていく作業。小さな飴と巨大なムチ。他人の思い込みを切り崩すって、そう簡単じゃないから(笑)。

3:ツアーで最もスタイルのいいサーファーは誰か


ミックは「イーサン・ユーイングは14歳ぐらいの時から見てるけど、パワー、フロー、スタイル、どんどん良くなってる」 といい、セレマは「もし自分がこうなりたいってスタイルならステファニー・ギルモアだ」という。

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Photo: WSL

ミックは、「そのサーファーを見るとサーフィンしたくなる、それがスタイルのいいサーファー。ジョエル・パーキンソンは実にラジカルなことを何でもなさそうにやる。ステフも、ここをもっとこうすればみたいなところがない」と、ステファニーのスタイルの良さで意見が一致。

ここでミックが、サーフィンを始めたころ誰のサーフィンを見て、サーフィンしたいって思ったかと質問。セレマは「トム・カレン」。ミックは「子供の頃はマーク・リチャーズ。とにかくユニークなスタイル。ガルアームス(カモメのように両腕を広げるスタイル)も何もかも、すべてがユニークだった。ティーンエイジャーになってからはテイラー・ノックス。ずっとテイラー・ノックスみたいなサーフィンがしたいって思ってた」といった。

4:メンタルの強いサーファーがケガからの復帰も早いか。メンタルタフネスについて


ミックは、「2004年のケガの時には自分をどうハッピーな気分に保つのかコントロールができず、再びサーフィンができるようになって初めて幸せを感じられた。周囲のサポートや暗いトンネルでもいつか必ず出口が見えると思えないとつぶれてしまう。2018年の膝のケガの時にはすでにメンタルツールを持ってたので、あれこれやって克服できた。鏡の自分にウソはつけないから、鏡を見て何度も自分に問いかけた。これでいいのか、って。そうやってひとつを乗り越えれば、もしかしたらもっと悪いことになってたかもしれないんだから自分はラッキーだったって思えるようになる」と。

セレマは、「自分を突き詰める、深く知ることが回復につながる。ビリー・ケンパーは兄の死や母の死を乗り越えたことで、今回の自身のケガをも乗り越えることができた。ケガは時間がたてば回復するけど、心も共に回復するとは限らない。肉体的には完治しているのに心がストップをかけるというのは、すべてのリハビリの中でも最も難しい部分で、心からまたパドルアウトするんだ、って思えないとサーフィンには復活できない。しかもビリーのそれはビッグウエイブだ。そこがビリーはすごいと思う」と。

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Photo: WSL

最後にココがミックに「ケガとJベイのシャークアタックのような心理的なショックとは何が違うのか」と聞くとミックは、「まるで違うもの。ケガはどう対処するかがわかっている。医者に行って、ジムでトレーニングしてリハビリ。でもあのサメ事件の場合は肉体的なケガは全くなく、すべてが心的な問題。ちょっとPTSD(心的外傷後ストレス障害)にもなった。サーフィンしてて背後で水しぶきとか上がるとパニック。友人がからかってわざと後ろで水しぶきとかあげたりすると、慌てて板の上に上がったりしちゃう。今でもまだちょっとドキッとする。またああいう状況になったらどうすればいいかは理解してるけど、背後の水しぶきはいまだに克服できないでいるんだ」と、重たい回答。

そういえばこの人がシャークアタック食らったんだった、と思い出したぐらい、私はすっかりそのことを忘れていて、そのぐらいミックはふつうに復帰した。でも実はいまだに事件を克服できていない部分があって、その辺の周囲と本人との意識のズレがメンタル面でのリハビリの難しさなんだろうな、と思った。ココもふざけて水しぶきをあげたひとりのようで、ミックに謝ってたけど、当事者には当事者にしかわからないトラウマが残るのだ。

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