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“US OPEN”日本人初の快挙の裏側(前編)

©WSL / Kenneth Morris  
“US OPEN”日本人初優勝!!

大原洋人の偉業は、8月3日深夜、テレビや新聞などのマスメディアでも報道され、サーフィン界のビッグニュースとなった。
しかしその数日前、それを予感させる話が会話されており、更に遡ること2週間前には、その前兆が現れていたのだ。

一部のサーフィンメディアやSNS投稿等で、この偉業を小波ゆえの幸運な勝利ともいわれていたが、個人的にはその背景を事前に知り、密かに、いや、強く期待をしていただけに必然的な出来事にさえ感じている。


7月30日都内某所にて、大原洋人を全面サポートするブランド「Hurley」の展示会が開催さていた。Hurleyインターナショナルのメイン・ライダーであるJOHN JOHN FLORENCE、JULIAN WILSONのシグネチャーボードショーツをはじめ、NIKE資本によって展開される世界TOPレベルのテクノロジーが紹介される中、もう1つの話題は大原洋人の可能性について。開催中のUSオープンで、ちょうどラウンド2を勝ち上がったところだった。

「もしかしたら・・、可能性はあるよね。」

当たり障りない表現ではあるが、数少ないチャンスを活かし、コンディションをも味方につけて勝ち上がっていくヒロトは、サーフィンも調子良さそうに思えた。
関係者も皆、そう甘くは無い現実は重々承知しているが、数日前にもビッグニュースが飛び込んできたばかり。期待せずにはいられない、そんな空気が流れていた。



「Hurley Pro」のワイルドカードに大原洋人
©Tony Wodarck  

USオープン優勝の約2週間前、1つ目のビッグニュースは、今年9月に開催されるCT第8戦に大原洋人が出場する、ということだった。

ご存知、世界最高峰のプロサーフィンツアー“WSL(旧ASP)”が開催するコンテストのうち、限られたエリートサーファーのみが参加できる、Championship Tour = CT。
昨年までWCTと呼ばれていたこのツアーには、世界のトップ 34名のサーファーと、大会毎に設けられる“ワイルドカード”の2名のみが出場可能。
CTの舞台に立つことは、全世界のコンペティションサーファーの憧れであり、その正規メンバー34名の中に日本人の名前が挙がったことはない。

残り2名のワイルドカード(特別出場枠)は大会スポンサー側の意向により決定となるが、今年の「Hurley Pro at Trestles」はローカル枠、Hurleyチーム枠でそれぞれ争うトライアル形式に決定。

言わば“スポンサー枠を勝ち取った”わけだが、実はそんなに生ぬるいものではない。
今回のUSオープン優勝で「夢のCTメンバー入り」も現実味を帯びてきたわけだが、このトライアル勝利もまた、日本人初の快挙であった。



実力で勝ち取った出場枠
©Tony Wodarck  

「Hurley Pro」トライアルは、カリフォルニア“T-Street”を舞台にHurleyチーム8名、サンクレメンテローカル8名に分かれてコンテストが開催。
ラウンド1はそれぞれ2ヒートずつ戦う総当たり戦、そのトップ4名がマン・オン・マン(1対1)でセミファイナルを戦い、さらにファイナルを制した1名のみが出場枠を獲得するというもの。その1枠を勝ち取ったのが大原洋人。

そもそも「Hurleyチーム枠」と言っても、出場者8名はQSの世界ランキングより選出されており「日本から1名」などの推薦枠は存在しない。
自身の成績からそのチャンスを掴み取り、元CT選手のアレホ・ムニーツやヤディン・ニコルをはじめ、コナー・コフィン、クーパー・チャップマンなどそうそうたるメンバーを抑えての勝利は見事といえる。

かつて日本でワールドツアーが開催されていた時代は、ローカルワイルドカードとして日本人選手が参加していたが、海外のイベントでは初の快挙。
USオープン同様に、このトライアルもスモールコンディションゆえの勝利という見方もできるが、逆に言えばコンディション次第で勝機はあるのか。

ワイルドカードの宿命として、対戦相手はタヒチ終了後のランキングトップ(おそらく1位か2位の選手)との戦いとなるが、サイズが小さければ、エイドリアーノやミック、ケリーらにも勝てる可能性はあるのか。
そんなに甘くはないが、戦うチャンスがあるなら同じ日本人サーファーとして見届けたいと思うのではないだろうか。その舞台への出場権を、大原洋人が実力で勝ち取ったのだ。



実を結んでいく「Hurley Japan」の取り組み
©WSL / Sean Rowland  

スポーツ界では、もはや常識ともいえるコーチング・システムを、サーフィン業界へも早くから取り入れてきた「Hurley Japan」。

Hurley Japanのチームライダーには、チームマネージャーを務める糟谷修自のアドバイスや、技術面などをサポートするコーチが付くなどしてトレーニングしている。

昨年末、BCMでもskypeを通して直撃インタビューをさせて頂いた通り、冬のハワイ・ノースショアにはチームメンバーが滞在できる拠点も用意されているが、海外コンテストへ参戦ともなれば、慣れない土地・環境での生活をしいられることとなる。

コンテスト会場周辺には外国人選手や地元サポーターも多く滞在しており、選手・観客も含めたアウェーな雰囲気の中で試合に臨むにはメンタルの強さも必要となるが、特に大原洋人へは試合会場のコンディションとサーフボードの相性を糟谷修自が入念にチェックし、当日のボードチョイス〜試合の組み立てなどをアドバイス。大会期間中は宿泊場所〜食事面をもサポートしていく糟谷修自の存在は大きく、大原洋人も信頼をよせていた。

©Tony Wodarck  

今回のUSオープンは「Hurley Proトライアル」からの良い流れを持続させ、何も迷うことなく試合へ望んだ結果だったとのこと。ファイナルまで集中力を切らさず、自分を信じて100%の力を出し切ることに徹した結果、日本人初の快挙を成し遂げることとなった。

以前に比べると、サーフィン自体のスタイルが多様化し、コンペティションが強くフォーカスされる機会が減ったようにも思うが、Hurley Japanのようにメーカー/ブランドの中には、かつて以上にコンペティションへ向けたジュニア育成、バックアップに力を入れるところも多く、様々な取り組みが行われている。

選任のコーチをしっかりとたて、試合・トレーニングに集中できる環境を作る。実際に戦うのはもちろん選手個人だが、「チーム」としてのバックアップ体制を確立し、時間と費用をかけてきた取り組みが、結果として現れ始めたといえる。

では、今回の「US オープン優勝」は、どの程度の偉業といえるのか。
QSランキングってなんだ?
CTに入るためのポイントって?

日本人快挙のビッグニュースを機にコンペティションの世界にも興味を持って頂いた方へ、今回の成績が今後にどう影響するのか、次回記事でまとめなおしてみたいと思う。
ワールドツアーから見る大原洋人のポジション、夢のCTまでの具体的な道のりなどを踏まえて、2015年コンテストの後半戦や、来るCT第8戦「Hurley Pro at Trestles」をぜひ楽しんでほしい。



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