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ケリー・スレーターが10年を費やしたウェーブプール完成について語る



昨年のパイプマスターズ終了直後に発表されたケリー・スレーター考案のウェーブプール。
ケリー自身がその波に乗った映像は動画サイトやSNSで世界中に瞬く間に拡散され、大きな話題になっていました。

今回は最新号の表紙にこのウェーブプールの写真を使用した米SURFERの編集長トッド・プロダノヴィッチがケリーにインタビュー。
ウェーブプール開発のきっかけから完成までのプロセス、ウェーブプールの将来など。
オール翻訳のロングインタビューです。

■ケリー・スレーター=KS


■SURFER
あのウェーブプールが完成するまで約10年と言っていたけど、そのモチベーションとは?
何があなたに人工の波を作らせようとしたの?


■KS
パーフェクトな波でサーフィンする魅力。
その考え自体は昔からあったよね。
初めてウェーブプールでサーフィンした時、なんて斬新なアイディアなんだって、まるで子供のように思ったんだ。
ウェーブプールを楽しみ、乗り尽くしたけど、なんか物足りなかったのさ。
それがきっかけになって、自然の波と同等のウェーブプールを開発することに夢中になったんだ。
ある意味、使命感もあったよ。


■SURFER
海がライバルとなった人工の波の開発。それは初めてのことだし、簡単では無かったと思う。あなたのチームの最大の難関とは?


■KS
人工の波を開発する時、最初に手に入れた情報は私達の期待を下回る内容だった。
最大の難関は科学的なアプローチで開発したことかな。
最初のチームでは知識が足りなかった。波、水の動き、全てを把握するために流体力学の専門の科学者や、トップクラスのエンジニアを雇う必要があったのさ。
ゼロベースからの開発。物理学を理解するための形式的手法、最高の波を作るために研究室も必要だった。


■SURFER
波の仕組みとは?平均的なサーファーにも分かるように説明できる?


■KS
簡単に言えば飛行機の翼に似ていいるものを使用している。
水中翼船と呼ばれるものを水の中で動かすと海と同じようなウネリを発生することが可能になる。
この運動と独自の科学的な方式を組み合わせ、更に波の形を考えてボトムに傾斜をつけているのさ。
現在発表できるのは以上だね。

このシステムは科学と工学を応用すれば無限のバリエーションが可能になる。
公開した動画で「最高のテクノロジーだ!」と言ったけど、「テクノロジーで解決した!」という表現の方が近いかな。


■SURFER
このウェーブプールのために全力を尽くしたようだけど、具体的に自分では何をしたの?


■KS
全てのプロセスに関与したかった。
それだけこのプロジェクトには情熱を注いでいたのさ。
チームが一丸となって’最高の波’を作るというビジョンを掲げ、同じ目標に向かえたこと。そして、自分のことを理解してくれたことはラッキーだったと思うよ。
それが平均的なサーファーよりもレベルが上のサーファーに向けての波だとしてもね。

同時に私達は様々なレベルのサーファー向けの波も必要だと考えている。特にもっと簡単に乗れる波。自分自身も含め、全てのサーファーが楽しめるようにね。
このチームが成し遂げたことを本当に誇りに思うよ。


■SURFER
映像の中で最初の波を見た時に飛び上がって喜んでいたよね。あの時の心境は?


■KS
ツアーでフィジー(6月)にいる時に完成して数日間稼働していたんだ。チームから最初のテストの話が伝わっていたのさ。
良い結果だっただけに、ツアーのみんなに漏らせず、極秘だったのが辛かったね。
その1週間後に写真や動画が自分のスマホに送信されてきた。最初にあの波に乗った時は、前夜に到着したばかりで寝不足だった。
無風で寒い朝。約10年も取り組み、夢だった波を目の前にした瞬間。その気持ちを説明するのは難しいよ。




■SURFER
波の速度、ピッチ、全体的な波の感覚。それは海と似ているけど、大きな違いはあるの?


■KS
自然が生み出す曲線、海とプールという基本的な環境の違いはあるよ。
しかし、私達が作った波はエネルギーがあり、パワフルでスピードがある。
乗る時に初めて理解する感じもあるけど、基本的には海の波に似ているさ。


■SURFER
この波をどのように利用したい?サーフィンというスポーツ、文化を変える可能性がどのくらいあると思う?


■KS
マニューバーの練習やサーフボード、フィンなどのテストには確実に使えるね。
次のセットを待つ必要がないし、同じ波を何度も乗ることが出来るから、落ち着いてサーフィンが可能になる。

人工の波によって文化が台無しになってしまう可能性があるという恐れ、不安はあるだろうけど、あくまで海の補足、楽しみの一つだから、心配はしないで良いと思う。
スケートボードパークがスケートボードの楽しみを増しているようにサーフィンの成長に一役買うんじゃないかな。
オリンピックの舞台になる可能性だって否定はできないよ。


■SURFER
あのウェーブプールでのサーフィンの後、混雑した海に戻るのは嫌だったのでは?人工の波による’二日酔い’的な...。


■KS
あの波に乗ってからハワイに来た。
パイプでのバレルをメイクするためさ。
でも、常に混雑しているあのラインナップにいたら頭の中で考えていたバランスが崩れたんだ。
あのウェーブプールでリラックスしながらサーフィンしたい。あの波に乗ってからサーフィンがどれだけ自分を解放してくれるかを証明してくれたのさ。
自分も含め、サーファーとは落ち着いて良い波に乗れる場所を求めているんだよ。
だから、ウェーブプールがサーファーをハッピーにしてくれると確信している。わざわざ誰もいないようなバレルを探して移動する必要は無い。

例えば、サンタバーバラに住む友人は多くのウネリを沖のチャンネルアイランドにブロックされている。
フロリダのサーファーは波がある夏が待ち遠しい。
そんな彼らをウェーブプールはどれだけ楽しませてくれると思う?

’サーフィンとは経験’さ。
あの波があればナーバスになることもないし、いつでもサーフィンを楽しめる。

でも、最後に言うけど、’サーフィンは旅’でもある。
あの波があっても、世界を回るのは止められないよ。

Kelly Slater discusses the perfect artificial wave that he’s spent the last 10 years developing

Kelly’s Wave


photo: SURFER Covered Images

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