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水中フォトグラファーが語るミックのシャークアタック



ファイナルでミック・ファニング(AUS)がシャークアタックに遭い格闘の末に生還。
話し合いの結果、同率2位という形でファイナルはキャンセルという結末となった南アフリカのJeffreys BayでのCT第6戦『J-Bay Open』

日本のテレビでも大々的に取り上げられたため、サーファー以外もこの衝撃的な場面を知ることに...。

ファイナルの後、少し間を置いたインタビューでは、ミックの近くにいて勇敢にも彼を助けようとまでしていたジュリアン・ウィルソン(AUS)が泣きながらその時のことやミックの生還を語り、ケリーさえもいつもと違う固い表情で話していたのが事の重大さを物語っていました。

今回はあのミック&ジュリアンによるファイナルをラインナップから約150m離れた位置で撮影していた南アフリカのWSL公認フォトグラファー、ケリー・チェスターリがミックのシャークアタックについてWSLからインタビューされた記事を翻訳。
ボートとジェットスキーに救助された二人の選手の影で彼はビーチまでの約50mを泳いで戻ったそうです。



■WSL 
あなたはあの現場にいて水中撮影をしていましたが、すぐに何が起こったか分かりましたか?
それともビーチアナウンスで知りましたか?


■ケリー
私はQFの約2時間を水中撮影していて、SFではクリスティン・シュルツ(他のWSL公認女性フォトグラファー)と交代して陸から撮影したんだ。
それからファイナルの前に再び海に戻った。ファイナルが始まる前、約30分前には泳ぎ出していたよ。
「Keyhole」(セクションの名称)まで歩く変わりに泳いだ。そこから観客のいる辺まで泳ぎ、一度ボートに乗り込んだのさ。

ハプニングが始まったのは、ジュリアンが最初の波に乗り、恐らく2〜3分経過したくらいだった。

あの水しぶきは印象に残っているよ。私は海に浮かび、サーファー目線で見ていたからね。波が入り、水しぶきが上がり、ミックが回転した後、奴のヒレで叩かれるところも見た。

数秒間は完全に頭が真っ白になっていたよ。
「一体何が起こっているんだ!?」ってね。

その後、ビーチコメンテーターが叫び始めたんだ。

「早くミックの元へ!」
私もボートの方を向いて、「早くミックの元へ!」と何度も叫んだよ。

トラブルに巻き込まれた人を助けるのが彼らの仕事。ボートとジェットスキーは全速力で彼の元に向かっていた。




■WSL 
あの事故が起こっている時、どんな気持ちだった?
どのくらいの速さで泳いだの?


■ケリー
ハッキリは認識していなかった。
水しぶきの後にフィンを見たけど、その状況を理解するまで時間がかかったよ。
それに、何をするべきか分からなかった。
写真を撮れば良いのか?そもそも、その写真は必要があるのか?文章にしなければいけないのか?
でも、考えている内にボートは立ち去ってしまい、そこから岸に戻る必要があった。
もう少し考える時間があれば、ジェットスキーで戻ってもらい、少し泳いでいたかもしれない

ダーバンにいる時は約1時間南に下ったリーフでフリーダービングをすることがある。
そこには鮫だっているよ。
Black tip reef sharks(メジロザメ属のツマグロ)、Tiger sharks(イタチザメ)が近づいたことも数回あった。
そして、パニックにならないこと。彼らの近くで水しぶきは上げないこと。ゆっくりと泳ぐことなどを学んんだ。

あの時も出来る限り遅い速度で泳いでいたから、クリスティンにおかしいと思われたみたい。
彼女からは私が普通に泳いでいるように見えていたんだ。ビーチから私に向かって叫んでいたよ。

覚えている限りのことを言えば、なるべく水しぶきは上げたくなかった。ウネリに合わせるように進んだのさ。
岸までは約50m。ムラサキ貝が張り付く岩場まであっと言う間に辿り着いた。ここまで鮫が向かってくることは無いだろうと考えていたけど、私が岸に戻るまでミックは動揺していたね。
「私は大丈夫。もう安全さ。問題ないよ」って思っていた。ありがたいことに、皆心配してくれていたみたい。




■WSL 
あれは皆にとって衝撃的な経験だった。
あなたの感情はどう動いた?


■ケリー
今回のことは誰もが考えていたこと。起こるかもしれないけど、決して予期はしたくないことだよね。
岸に着いてからボートを見たら、ミックが震えながらインタビューをされていた。
そこで「これは本当に起こったことなのか?」と初めて思ったほど。
そして、ウェットスーツを脱いで、少し時間が経って考えた後、正気を失ったのさ。
悪い方に全てのシナリオが変わってしまった。

海に入る時はいつも妻(6月に挙式を上げたばかり)にメールをするんだ。
入る前には、「今から海に入るよ」
海から上がったらどんな時でも、「今、海から上がったよ」とね。

ファイナルの前もいつものように彼女にメッセージを送ったんだ。
すると「鮫がいるわ。お願いだから海には入らないで」と返信が残っていた。

恐らく、全てが終わった後にメッセージを送ったのだと思ったけど、すぐに彼女に電話して、「皆のおかげで事なきを得たよ」と話したんだ。
それから約20分後にもう一度彼女に電話した時、彼女は少し混乱していたよ。


■WSL 
ビーチの光景はどうだった?
観客はどんな反応だった?


■ケリー
とても静かだった。
それだけ衝撃的だったし、信じられないことだったんだと思う。

いつもなら、海から上がってビーチを歩いていると、「波はどうだった?」とか観客に聞かれたり、気軽に話しかけてくるけど、あの時は本当に静かだった。
誰も喋りたくないし、何もしたくなかったように感じたね。

でも、ミックが戻ってきた時は皆が拍手していたよ。

WSL公式サイト






photo: WSL Covered Images

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