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「ナホトカ号重油流出事故に学ぶ」油の回収作業とは

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東シナ海で発生した石油タンカー衝突事故の現状などを調査、情報の取りまとめなどを行っている「THE SURF NEWS」サイトより、BCM協力のインタビュー記事が公開。

1997年に発生した“ナホトカ号重油流出事故”より学ぶ、油の回収作業とは。ぜひご一読ください。


(以下、THESURFNEWSサイトより)

今回の事故と油漂着、除去作業など一連の状況を受け、波情報BCMを運営する㈱ライズシステム様の協力、コーディネイトのもと、1997年のナホトカ号重油流出事故の際、現地で漂着物回収作業に取り組んだ3名にインタビューを行い、当時の話やその後の話を聞かせて頂いた。

漂流物が多く、除去作業に苦労をした福井県三国と京都府丹後半島に位置する網野での経験談を通じ、注意事項など貴重な話を多く聞けた。

どちらのエリアでも、サーファーネットワークの初動が注目され、地元に住む方との絆ができ、サーファー自体のイメージが良くなったなどの嬉しい後日談などは、多くのサーファーでシェアしたい内容でもあった。

【インタビュー参加者】
守山倫明さん
網野町にて老舗旅館「守源」を経営する傍ら、サーフライダー・ファウンデーション・ジャパン(SFJ)代表も努めた経験がある。

大井七世美さん
三国町・三国サンセットビーチにてサーフショップ「NansSea」を経営し、自らも海女さんとして海に潜り浜茶屋も経営。

BCMスタッフSJさん
「サーフィン波情報サイトBCM」スタッフ。事故当時、三国から丹後エリアまでを巡りボランティアスタッフとして油回収の手伝いをした経験を持つ。


【今回の油漂着のニュースを聞き、何を思ったか】
まず、初動の大切さの話が出たが、それは「重油の除去」は、砂の中に混ざってしまう事が最も厄介だからだそうだ。
砂に潜ってしまった油は見つけ難く、拾い難く、踏んでしまう事さえある上、ビーチの砂と油が混ざったものをこす作業工程が発生してしまうためだという。

あの時は、サーファー達でいち早く回収作業を始めた中、一部の方からは行政の仕事だと言われたが、初動が大切だったと思う。(守山さん)

サーファーは漂着前から、海を見に行くなどしていたので、いち早く自然な形で回収を始めたのだと思う。(大井さん)

今回の奄美大島の映像や画像を見ていても、除々に漂着した油が砂に紛れ始めているので心配になった。(SJさん)

宝島の業魚関係者に聞いたが、既にビーチの砂と油が混ざっていて“こしている”という話しだった。また、当時、石川県の某海岸では重油を砂浜に埋めてしまい、後に大変であったこと、何年も残ってしまったという話を想い出した。(大井さん)

どの程度の量(燃料油)が存在するのかが気になる。(SJさん)

粘着性の高い、固まる前の油があるのなら、マスクをして回収作業をして欲しい。(大井さん)

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船体から流れ出すC重油と共に、福井・三国に漂着した「ナホトカ号」。


【油の回収作業を思い出して】
1月初旬から始めて、約3ヶ月間、3月いっぱいかかりましたかね。(守山さん)

ある程度、除去できたと思っていても、夜にオンショア(海風)が吹き、翌日行って見ると作業前の状況に戻っていたりします。(SJさん)

皆で一生懸命作業して、綺麗になり、また翌日に元通り、この繰り返しが辛かった。(大井さん)

作業は少しづつ減っていく、良くなると信じるしかなかった。(守山さん)

ボランティアは無理せず、周囲の情報収集とともに気をつけて欲しい。(SJさん)

髪についた油はなかなか取れず、ママレモンで洗い流す年配の方も居た。(大井さん)

汚れた衣類は洗わずに「使い捨て」にすべき、それらの処分方法も準備が必要。(大井さん)

あの時は、サーフィンメディア(サーファーがDJをするラジオ、波情報、雑誌、口コミ)により拡散され、全国から支援が届いた。(SJさん)

送ってもらった衣類やウエット、店の新品ウェットも使用したが全て使い捨てにした。(大井さん)

不思議なもので、自然物に付着したものは取りやすい。岩場に付着したものなどはまとめて取れるが、逆に人工物に付着した油を取るのは大変。ロープなどは最悪。(守山さん)

玉石などは持ち上げると、周りの重油がドロっと集まり、いっぺんに大量回収できました。(SJさん)

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ボランティア本部が自然発生、いち早く動き出したのはサーファーだった。


【当時を振り返って】
三国も、網野も最初に回収作業を始めたのは、サーファーであったという。
日頃、海で遊び、ビーチクリーン活動を行う者達の自然な流れで始まったのだろう。
サーフィン系メディアだからという訳でもないが、この事を忘れず、誇りに思いたい。

むしろ、最初はサーファーしかやってなかった。地域の人はこの寒いのに何やってるんだ、行政に任せるべきだと笑っている人も居た。(守山さん)

ボランティア本部を立ち上げたのもサーファーが最初でしたよ。(大井さん)

徐々にサーファーが増え、板を持たずに遥々来るサーファーのボランティアも増え、地域の人も参加してくれるようになった。(守山さん)

ある意味、日本海の冬の海の事も沿岸部についてはサーファーの方が詳しいですから。(大井さん)

今夜から風が吹くから明日はまた(油が大量に)上がるね。なんて会話も自然に出ていました。(SJさん)

両エリアは特にサーファー色が強かったですが、その他の場所でも地元をはじめとしたサーファー達が活動していました。(SJさん)

当初はやり方をルール化出来なかったため、周辺道路やスーパーの床など、町中が油だらけになった。(守山さん)

自分が網野に到着した時には、浜から上がる際の通り道に長靴を洗うための薬剤を入れた洗い場が出来ていましたね。(SJさん)

除去作業の後は長靴を洗うなどがルール化され、徐々にボランティアも慣れていき、街も綺麗になっていった。(守山さん)

三国では、早い段階からビーチのみ通り道を確保し、ボランティアはそこを通ってもらう形で対応していた。(大井さん)

地域の人は「行政にはできないこと」として宿やバスの手配をしたり、役割分担ができていたと思う。(守山さん)

2年前にあった阪神・淡路大震災の影響もあり、ボランティア意識が高まっていたタイミングでもありました。実際にその際にお世話になったのでと語られていたボランティアの方も居ました。(SJさん)

地域の方が参加しはじめると、子供や妊婦の応援もあり、事務仕事などを手伝ってもらった。(守山さん)

個人的に辛かったのは「海に入れない」ことです。一般的には理解されないでしょうが私達の生活の一部ですから。(大井さん)

綺麗な場所や、人が見ていない時間帯など、「入っていいか」と言い出す若い子達と何度もケンカになりましたが、良い波が割れていても、集まってくれたボランティアのために自粛してもらっていました。(大井さん)

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サーファーによる油の回収作業。日本全国から延べ2000人以上のサーファーが駆けつけた。


【2つの反省点と後悔】
当時を振り返り大井さんは、自身の後悔であり反省点として、科学的な根拠や因果関係などは分かりませんがと前置きをした上で、以下2つの点を是非、掲載して欲しいと訴えていた。

①マスクをせずに作業したこと。
何らの根拠と因果関係を示せるものではないが、(具体的な病名などには触れないが)何年か後に体調を崩した者が多った。
一般的な白マスクではなく、フィルター付きのマスクが必要だと考えており、臭いもかなりキツイが何日も作業を続けるのであれば、体内に入れない配慮をして欲しい。

②除去した重油の処分についての確認
当時、重油を回収する事のみに集中してしまい、その処分を行政任せにしてしまったが、後に調べたところ、どのように廃棄したのか、誰も分からない状態だった。行政が業者に委託したのだが、その先を見届けられなかった事を今でも後悔している。


【油が無くなるまでの期間】
海岸には、海水浴場などの砂浜以外に岩場や人も降りられない様な入り江などもあり、全ての場所で人手による油の回収、除去作業が出来た訳ではないが、やがて消えていったとも言う。

その様子を専門家(鹿児島大学環境保全研究室・宇野誠一准教授インタビュー記事参照)に聞くと、人の手で除去しきれなかった油状漂着物は、その後高い気温で揮発したり、太陽光で分解されたり、固形化した塊が雨や波で削られるなどにより、徐々に小さくなっていくとの事だが、どれくらいの期間が必要な印象なのだろうか。

回収作業のサイクルも減り、約3ヵ月後には収束宣言を出しました。最後は粒状のものになり、少しづつ無くなっていった印象。(守山さん)

破損した船首部が漂着した三国では、厚みが60cmもある座布団のような重油の固まりもあり、4月(約4ヵ月後)いっぱい作業を行い、GWに除去祝いを兼ねたイベントを実施し、花火を上げました。(大井さん)

人の手があまり入っていない海岸でも、半年くらいの後には綺麗になっていった記憶があります。私たち人間は、海の浄化のほんの一部のお手伝いをしただけ、海が自ら綺麗になろうという自然のパワーには驚かされました。(大井さん)

写真:NansSea
記事:THE SURF NEWS

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