48歳のビッグウェーブ界のレジェンドにインタビュー

史上最強のエルニーニョ現象の影響でビッグウェーブでのサーフィンが注目されている今冬ですが、ラインナップは意外に年齢層が高く、その中でも48歳(今年で49歳)のブラジリアン、カルロス・ブールは多くのサーファーからリスペクトされています。

ブラジル、いや世界のビッグウェーブ界のレジェンドでもある彼は、『THE EDDIE』にも招待され、2002の『XXL Award』も獲得し、他にも数え切れないほどのセッションを記録。

コンテストの世界では2009年のBWT(ビッグウェーブツアー)のグランドチャンピオン。
トドス・サントスを得意として1989/1999年のエルニーニョの年に優勝。
今年も1月中旬に開催された『Todos Santos Challenge』でファイナルに残り、まだ現役で通用することを証明していました。

また、昨年の12月最初の日曜日、マウイ島のPe’ahi(Jaws)で開催された『Pe’ahi Challenge』では、BWTで最もグレード(サイズでゴールド、シルバー、ブロンドに区別される)が高い、45ftオーバーサイズのゴールドにも関わらず、果敢なチャージを披露してSFに進出。

そんなカルロスにWSLのエディター、アンナ・ダイモンドがインタビュー。
サーフィンはもちろん、人生、愛、恐怖．．．。

一般サーファーから見るとスケールが違う話と思いますが、ビッグウェーブにチャレンジしたい、克服したいという想いは同じ。
言葉のひとつひとつに学ぶことが多々あります。

■カルロス・ブール=CB

---

■WSL　
あなたはトドスでの歴史を持っています。あの場所では何が違うのですか？

■CB
アプローチの仕方かな。
私はもう若くないし、体力もないけど、経験だけはある。
ただ来た波に乗るだけではなく、戦略が必要なんだ。あの日は波があったけど、朝からオフショアではなかった。
オンショアが助けてくれた部分もある。私は小さくて軽いサーファーだから、オフショアはあまり好きではないのさ。

---

■WSL　
『Pe’ahi Challenge』の初チャレンジの時、人生で最高の時間だったと言いましたね。何が特別だったのですか？

■CB
ビッグウェーブでのサーフィンで生き残り、なおかつプロサーファーとしているのは、簡単ではない。
イベント数が少ないし、私達は実際にサポートを受けてはいないからね。
Jawsがツアーに加わり、その最初のイベントに参加することが人生の大きな夢の一つだったんだ。
それは完璧な試験場を舞台に人生で最も究極な状況の中で行なわれる最高のチャレンジさ。

---

■WSL　
Pe’ahi(Jaws)が与えるサーファーのストレスのレベルとは？

■CB
それは面白い質問だね。
昨晩、妻に「私はビッグウェーブサーファーになりたい」って話したんだ。
どんな過酷な状況でも自分をコントロールすることが出来るようになったからさ。

あの波を前にして一部の人はとても怯えてしまうけど、あれがビッグウェーブサーファーの醍醐味だよ。
もう何も出来ないような状況に置かれた時でも私達はやるしかないのさ。

---

■WSL　
あなたは父親でもありますよね。ビッグウェーブとティーンエイジャーの親を比べるとどちらが難しいと思いますか？

■CB
ティーンエイジャーの親だね。

---

■WSL　
サーフィン以外のことで、最も誇りに思うことは？

■CB
妻との生活。彼女は人との関わり合いが大好きで、生活に関した全てのことに知識がある。
そんな彼女に感心し、一緒に生活していることを誇りに思うよ。

---

■WSL　
あなたの人生で最も辛かったことは？

■CB
今のところ、ここで言うほどの辛いことはないよ。

---

■WSL　
最も怖いことは？

■CB
自分の感情を抑えることが出来ないこと。

---

■WSL　
自分自身について直したい部分はある？

■CB
人と競い過ぎること。
それは嫉妬ではなく、あくまで競争。
「本来の自分ではなく、ただのエゴだよ」って気付いているし、客観的にも見れるけどね。

---

■WSL　
でも、それってコンペティターとして役に立つのでは？

■CB
その通り。人間だし、生き残るための性質でもある。
人間が本来持っている予感。もう一つは生存と再生する力。
競争にはこれらも必要さ。

---

■WSL　
他の人に比べて何が足りないと思う？

■CB
貪欲さかな。

---

■WSL　
あなたを曲に例えると？

■CB
素晴らしい1曲があるよ。
この曲を聞くと父のことで頭が一杯になるんだ。
以前の自分は大きなプレッシャーを感じていた。だから、社会から外れた部分を表現しているサーファーになりたかったのさ。
そう、自由になりたかった。

その曲名はビートルズの「Free as a Bird」さ。

---

■WSL　
理想の人生とは？

■CB
シンプルに嬉しい時や、興奮している時は感情のまま泣きたい。
素直に涙を流すことは素晴らしい気持ちだと思うよ。

誰かとその感情を共有していることを幸せに感じる。
何かをシェアしながら人生を共有している幸せ。
正直に向き合えば、価値観を共有することができる。
私にとって人生で最も重要なことさ。
これはゲームではない。
人生でこれ以上重要なことはないよ。

WSL公式サイト

photo: WSL Covered Images