エアーの乱発でCTはつまらなくなっている?![WSLディベート第22回]-F+ | サーフィンニュース BCM | コラム特集

TOPNEWS > コラム特集
NEWS / BCMサーフィンニュース

コラム特集

エアーの乱発でCTはつまらなくなっている?![WSLディベート第22回]-F+

Text by つのだゆき

カリフォルニアのサーフランチはフィリッペとジョアンヌ・デファイが優勝。2位はガブとカリッサで、この2位ふたりはすでにトップ5入り、ロウワー決戦行を確定している。ガブ今シーズン6試合中5試合でファイナル、優勝2回、2位3回。今までのシステムならタイトル秒読みなんだけど………。その独走ぶりはカリッサも同じ。6試合すべてセミ以上、ファイナル3回セミ3回、この先の2試合がメキシコ、タヒチということを考えれば、トップはこのふたりで確定だろうと思う。でもね、こんなに独走しててもワールドチャンピオンじゃないかもしれないから(笑)。

これさ、やっぱ私はうまく呑み込めないなぁ。どんな理由があるにせよ、ワールドタイトルがこのふたり以外に行くってのはのどに引っかかっちゃうよ。エキサイティングとか注目を集めるとか、いろいろあるだろうけど、スーパーボウルもクライマックスシリーズも、勝負ごとの基本ルールに反する気がする。勝負ってぐらいだから、たくさん勝った人が勝ちじゃないと、やってられないんじゃないのかね。

Finalists_Ranch21_Heff_8949
PHOTO: © WSL / Heff

さて今回は何とミックとテイラー・ノックスのディベート。これは面白いところかな、と思う。テイラーがキャリア終盤にリップカールに移籍してから、いやそれ以前からでもあるけど、このふたりは結構気が合ってて大の仲良し。ミックも理論派だけど、テイラーも理論派。読書家で知的な感じのする、ツアーサーファーには珍しいほうのタイプだ。どちらかといえばふたりとも、「古いやつだとお思いでしょうが……」的な義理人情というか、サーフィンで言うと、カーバーであってオフレールではないグループ。

テイラーはバックウォッシュのある波が嫌い、ミックは相変わらずマーガレットリバーが嫌い(笑)、テイラーはマーガをバッタみたいな波と形容し、笑えた。当てられそうで当てられない、ダメそうでベストポケット、つかみどころのない、意外性だらけの動きのバッタ。言いえて妙。

ではディベート第22回行きましょうか。
gh22
Photo: WSL

1:サーフランチプロではみな同じような板だけど、もっといろいろなボードに乗ったほうがいいと思うか。


ミック:サーフランチはいろんなタイプの板を試すのにいい場所だと思う。みんなプール用の短い似たような板を持ち出してくるけど、もっといろいろあってもいい。

テイラー:そうだね。例えばツインフィンとかだったら驚きの動きができそうだ。プールだからどうこうじゃなくて、純粋にパフォーマンスベースでジャッジされるべきで、このセクションはこう、みたいにあるべきではない。多様なデザインの板で、スピードの変化や多様な動きができると思う。それこそが観客の望むところだ。

ミック:波はどれも同じだから、変化が欲しいよね。違う板に乗らなくちゃいけないとか、何か工夫はあるはず。EPSとかケリーのやたらフラットな板とか、試す余地はある。

テイラー:リップカールサーチイベントみたいに、直前まで場所のわからない試合がある。それと同じように、例えば次はJベイだけど、6週間前ぐらいに板はボンザーとか、ツインフィンとか、特定のものに乗らなくてはいけない、みたいなアナウンスがある試合を見てみたい。みんな6週間前からしか準備できない。なんか、世界のベストサーファーが今までと違った形でチャレンジするのを見てみたい。違うラインを描いたり、乗りなれないタイプの板をどう扱うか、みたいな部分は面白いと思う。

ミック:自分が年取っただけじゃない?(笑)。でも確かにツアーにいたころにはハイパフォーマンスベースの板にばかり乗ってたよね。それじゃないとあのレベルではいいサーフィンできない、って恐怖があって、違うタイプの板に手を出す余地はなかった。キャリア終盤になってようやく少し違う板に手を出したりしたけど、やっぱり最高のパフォーマンスができる板ってのはみんなの乗ってるスラスターなんだな、と思う。

テイラー:わからないけど、過去40年間みんな同じデザイン、つまりスラスターに乗ってきた。ちょっと別のデザインの板を追求してみて、本当にどれがいいのかを探る必要があると思う。ベストデザインの板ってのは、いつの時代もベストサーファーの使う板から出てくるものだ。彼らが使って一般に浸透していく。だから彼らがいろいろテストして改善するのがいいと思う。デザインやフィンやいろいろあると思う。君のツインフィンでのスナッパーみたいにすごいことになるし、みんな興奮するよ。

2:エアーがふつうに試合で見られるようになって、エキサイティングな感じが薄れてきてる?


テイラー:確かにそれはある。今はそこらじゅうにエアー映像が氾濫してる。試合でもインスタグラムでも。だから麻痺してる感じかな。本当にすごいやつがわからなくなりそうだ。僕はもう少しエアーを減らして、代わりにテクニックやスタイルを出してほしい。いつも似たようなエアーばかりで、本当にすごいのしか印象に残らない。ニューキャッスルのメディーナ、ヤゴ・ドラのロットネストは突出してた。カリッサ・ムーアのニューキャッスルのエアーも、女子の進化という意味ですごかったね。そういうエアーは話題に上がるけど、例えばデーン・レイノルズがハレイワでやったような両腕が後ろに行ってるようなすごいカーブとか、そういうのもミックスしてほしい。とにかくエアーは多すぎてちょっとうんざりな感じもする。慣れちゃってる感じっていうか、そうあるべきではないのに、インパクトが薄れる。

ミック:エアーが普通になっちゃったのは、ガブやイタロみたいな選手がちょっとエアーすれば最低でも6.5とかついちゃったことが問題で、そこからジャッジは高さ、回転や着地点なんかを精細にみるようになってきたと思う。最初のいくつかのイベントでの採点にイタロは罪の意識を感じてるかもしれない。回ってクローズアウトのフラットな部分に着地する、それだけで最低でも6.5だったから。
gh22b
Photo: WSL

で、子供たちはそれを見て、試合で勝つにはそれをやればいい、って思うようになる。僕はジャッジがもっとポイントをコントロールするべきだと思う。近年のエアーは僕たちの時代のフロントサイドハックと同じような存在だと思うんだ。自分が現役だったころよく人から言われてたのは、何度も何度も同じターンをするってことで、それでハイポイントをもらってたことに罪の意識を感じたこともあった。でもそれはどうやったら点が出るかをわかってただけ。今の選手はそれと同じように、エアーがそういうものなんだって考えてるんだと思う。

テイラー:それで点が出るなら、それをやるよね。だからジャッジがもっとどういう風にしたいかを明確にポイントに反映するべきだ。オーストラリアレッグでは150回以上クローズアウトにテイクオフして、回ってフラットに着地、ってのを見たと思う。波の選択なんて採点対象外だ。僕はもっとテイクオフからの流れやテクニック、スタイルを見たい。ただテイクオフして走って飛んで着地はつまらない。

3:シーズン前半最大の話題はケガ問題と言えるか


ミック:ジョンジョン、コロヘ、エース・バッカン、ミシェル・ボレーズ、レイキー……本当に今年はケガが多いし、予想外な結果になってるビッグネームが多い。早く戦線復帰できるといいと思う。

テイラー:確かにそうだ。ホテルに2週間の隔離の影響もあるだろう。普段毎日サーフィンしてる選手が2週間それをやらなければ、トレーニングしてたところで、身体は変わってしまう。後はオリンピックとツアーでマインドがバラバラになるって要素もあるだろう。オリンピック選手だからって過大にツアーでの結果を期待される。例えばジュリアンとかは序盤けっこうこれに苦しんでたと思う。そしてモーガンみたいな選手の登場だ。正直言って僕はそれまで彼のサーフィンを見たことがなかったから、びっくりした。

ミック:あぁ、最初にジョンジョンとやって勝った時はみんなびっくりした。次に当たったときはもうあの番狂わせは起こらないってみんな思ってたけど、また起きた。世界中に旋風を巻き起こしたし、その勢いでロットネストじゃファイナルまでメイクした。それはすごいニュースだね。この先ツアー後半、テイラーは何を期待する?

テイラー:ジョンジョンがタイトルレースの絡むのを期待してたし、この先そうなってほしいけど、まぁ、ちょっと違うシステムのシーズンってのは興味深いね。でも3勝とか4勝とかした選手が大差でリードしてて、それがロウワーの1日で変わるってどうかとも思う。例えばモーガンがロウワーに出れたら、彼だってワールドタイトルが取れるんだ。それはクレイジーな出来事だと思う。

ミック:可能性はあるよね。僕が後半期待するのは。以前リップカールサーチをやったメキシコのポイントでの試合かな。

テイラー:あぁ、そういう波の会場は必要だ。ビーチブレイクの試合が続いた後は特に。メキシコの波みたいな波は選手の力がよくわかるから。弱点や強さがもろに出るんだ。Jベイ、チョープーなんかもね。

ミック:ちょっとトレーニングしてワイルドカードで出れば?

テイラー:言われれば出るよ(笑)

4:サーフランチでのCTの試合は続けるべきか


テイラー:サーフランチの試合はCTに入れるべきではないと思う。例えば違うイクイップメントの縛りがあったりするなら別だけど、僕の友人はみんな見てて退屈するって言ってる。波が同じだから。海だったら同じ波はないからね。いい波だし、サーフする分にはいいけど、見るとなるとどうかな。例えば何か変わったことをしようとする選手がいても、そのセクションがない。人と違うマニューバーをするより、そつなく波をうまくコントロールすることが大事になる。それは違うかなと思うんだ。

ミック:近年では必要なものなのかなと思う。世界ではたくさんの人がプールでのサーフィンを体験してるし、日本のオリンピックはプールでって話も出てた。まぁ、ちょっと工夫は必要だと思うけど……例えば毎年違うプールで開催ってのもいいかなと思う。とにかく今やプールはサーフィンの中でも大きなものになりつつある。プール用の板も進化してきてるし。

テイラー:あぁ、違う会場、違うテクノロジーのプールでってのは賛成。とにかく違う何かが見たいんだ。今シーズンはベルズがない、スナッパーも。30年ぐらい毎年同じ場所で見てるわけだけど、それらはいざなくなってみると寂しい気もするね。例えばヨーロッパはちょっと違う会場とかでやってもいいだろうし、サーチみたいに毎回違う場所でやる必要はないけど、少し何かを変えるってのは必要。

ミック:ベルズ、Jベイ、チョープー……そういう場所は行くのがすごく楽しみだった。いい波だからさ。でもサーフランチとかそういう感じじゃないよね。ほかで勝つより評価されない感じというか……ランキングにあまり影響のない選手はブラジルをスキップするのと同じように、どっちかっていうと軽く考えがちな場所。だから、みんながベストを尽くしてチャレンジするような場所がツアーに入るべきだと思う。

テイラー:そうだね、興味が持てないような場所は入れるべきじゃない。すでにクオリファイしてるから、あるいはもう望みがないからって後半その試合をスキップするような会場は入れないほうがいい。それでも行きたいと思うような場所をツアーに入れるべきだ。年間1試合以上、毎回会場の違う試合を入れるのもいい。例えばサン・ルーみたいな場所。レフトの長いポイントブレイク。今のツアーはライトのポイントブレイクとレフトの掘れたバレル勝負しかない。レギュラーの選手がどんなバックハンドサーフィンするのか忘れちゃうぐらいだ。


≫ミックとロスのディベート「Getting Heated」 記事一覧

BCM の Facebook に「いいね!」をしよう

※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等を禁じます。

関連キーワードで他のニュースを探す

F+ エフプラス つのだゆき WSL ミック・ファニング Getting Heated