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「2019年スリランカ20周年の旅⑪」

ハルさんこと福島晴之氏のコラム、『One Earth』
「2019年スリランカ20周年の旅」
今回のテーマはライフガード。

カレントが強いスリランカの海では頻繁に海水浴客が流される事故が発生します。
それは今も昔も同じで、時には悲しい結末になることも...。

ハルさんも何度も命を救ったことがあるそうです。




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数ヵ月もの間。砂浜の上で生活していると色々なことに直面する。

ウミガメの産卵、そして孵化。シーズン中には毎日のように亀がやってくる。
ビーチはパーティで賑やかなのに不思議と亀はやってくる。

サーフィンしている時に沖で波待ちしていると沢山の亀に遭遇する。
大分人に慣れているのであろうか?

ローカル達は生んだ卵を大事に保護している。
2か月ほどして孵った子ガメたちをタライに集めるとロングボードに乗せて沖で離してあげるのだ。
その内、無事に大きくなれるのは1~2匹だという...。

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ある時、ローカルのサナが海に沈んでいたスリランカ人の少年を引き上げたことがあった。

すぐに辺りは人だかりになった。
しかし、誰も心臓マッサージや人工呼吸などを行っていない。処置をして人が亡くなった場合に責任を問われたら、ということで躊躇していたらしい。

そこで僕と日本からサーフィンをしに来た友達のターボーで蘇生を試みた。
日本で雪崩講習を数度受けていたので、それを思い出しながら頑張り、マンボーが車の用意をしてすぐに病院へ運んだ。

その晩、残念ながらその少年は命を落としたと病院から連絡があった...。

内陸のヌワラエリアという紅茶の産地から生まれて初めて海に泳ぎに来たという少年だった。
マンボー、ターボー。
そして、僕もその日は相当に落ち込んだ。

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(その名の通り、A Frameの波が特徴)


僕らの「A Frame Surf Shop」の前には大きく分けて三つのポイントが存在する。

左手にはレフト・ライトで「A Frame」 にブレイクするメインポイント、その右横には2サイズほど小さいレフトのブレイク、
ショップの真正面にはライトのポイントがある。

波が大きい時にはブレイクとブレイクの間に腹ばいになっていればカレントが自動的に沖へと運んでくれる。
それをサーファーたちに伝えるのが僕達の役目でもあるのだ。

しかし、ヒッカドゥワに来るのはサーファーだけでない。
海に慣れ親しんでいないヨーロッパの人達、スリランカの内陸の海を見たことがない人たちも遊びに来る。

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彼らが波打ち際から少し冒険して足の着かないところを泳ぐとカレントに乗ってどんどんと沖に流されてしまうのだ。
メインポイントが頭サイズ以上になれば、沖に流される人は毎日のようにいる。

中にはこの離岸流のことを把握していて沖に流されると横にあるブレイクのほうに泳いで行って大きなスープに乗りボディサーフをして難を逃れる人もいるが、大概は波を怖がって波のないところにいるので、100mほど流され岸に向かって助けてのサインとして手を振っている。

そんな時はローカル達の出番となる。

特に目の良いマンボーはみんなで談話をしていたなと思いきや、近くにあるサーフボードを持ってダッシュで海に飛び込んでいくのだ。
この瞬時の行動が何人もの人たちを救ってきた。

ポケットに大事なものが入っていようが構わずに行動するローカル達はマジでかっこよかった。
「助かれば良い」そう言ってポケットに入っていたタバコやビショビショになった財布を取り出して笑っている姿を思い出す。

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僕もヒッカドゥワにいた3シーズンで5~6回ほどライフセーブをしたことがある。

パドルアウトして近づき、声を掛けて落ち着かせてから自分が乗っていたサーフボードを渡す。
そして、パドリングをするように促す。
その時、リーシュは自分に着けたままだ。
「今日は天気が良くて最高だ!」なんて具合に楽しい会話を心掛けていた。
ブレイクの近くまで誘導できれば、あとは波に乗ったり巻かれたりして帰ってくるのだった。

ビーチブレイクと違ってリーフブレイクの離岸流は沖に引っ張る力が全く違う。
スリランカだけではないと思うが、こうしたローカル達の活躍で沢山の命が救われていることを知って欲しい。

続く。

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