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「2020年東京オリンピック」追加種目としてのサーフィンは現実となるか

photo:ISA  

2020年の東京オリンピック。この追加種目候補にサーフィンが選ばれたというニュースは皆さんもご存知の通り。
9月28日に追加種目としての提案内容が確定し、予定の種目数や競技者人数などを発表。各団体の記者会見もインターネットを通して全国に配信された。

業界内の各メディア、一般ニュース等でも報道された通り、最終決定とした5競技は、野球・ソフト、空手、スケートボード、スポーツクライミング、そしてサーフィン。

中でも“最大のサプライズ”といわれている「サーフィン」は、この発表をキカッケに各メディアからの注目も更に高まり、業界としても今年最大のビッグニュースとなったが、その一方では「まだまだ予断は許さない状況・・」との見解もある。

ここでは、今回の最終決定を受けて各団体から発表された声明や、記者会見当日で発表された内容などを簡単にまとめなおしてみたいと思う。



最終決定は「5競技18種目」うちサーフィンはショート男女

気になるサーフィンの種目数は2つで、ショートボードの男子・女子。
競技人数は男子20名、女子20名、合計40名。
開催期間はコンディションも考慮した3日間のうち、2日間程度の開催を予定とのこと。

場所については「現在は未定」としたが、話題の人工プールについては各報道陣からの注目も集まり、それぞれ発表にも異なる点などがあった。

まず大会組織委員会の記者会見の場では、名誉会長・座長である御手洗冨士夫氏より、人工プール施設の建設は予算の問題など様々な検討を行った結果「今回は建設しないことに決定した」と発表。
しかしその後、日本サーフィン連盟(NSA)の記者会見では、同じく開催場所については全くの未定ながら、人工プール施設の建設も含め「今後の検討」という内容で、まだ情報がまとまりきっていないような状況だ。

更にこの人工プール施設の可能性については一般報道陣からの関心が高く、建設にはいくらかかるのか、メリットはあるのか、そもそも「負の遺産にならないのか」などの質問も飛び出し、競技以外の利用例やサーフィンスクール等での活用案、更にはライフセーバーの育成などサーファー以外の利用方法も、アイデア次第では多分にあることを説明。

IOC(国際オリンピック委員会)に対してはISA(世界最大のアマチュアサーフィン組織・インターナショナル・サーフィン・アソシエーション)を通じて働きかけをしており、今月カリフォルニアで開催される“World Junior”へ同行の際にもISA側と打ち合わせを予定。何か進展があれば順次発表とした。



正式決定は2016年8月のIOC総会

最終決定は5競技、しかし今回の発表はあくまで開催国側としての意向、IOC側へ提案する競技の決定である。
非公式ながらも事前情報では、開催国より提案した競技は「ほぼ通る」という見解があり、この最終選考に残るべく各競技団体が注力してきた。
だが最終決定はIOC側の判断となり、来年の総会に向けた流れや、そもそも日本国内の選考基準についてなど様々な意見・憶測等が飛び交っているのも事実。

この最終選考にあたっては、IOCが求める選手数の上限は500名ということもあり、現実的な選手人数を考慮すると「野球と空手の同時採用は無い」という噂まであったが、それぞれ参加国数や種目数を抑える形を取り、最終的にはどちらも採用という結果。
さらには最大メリットともいえる“集客”の面と過去の実績等も踏まえ、野球はなんとしても通したいであろう組織委員会の思惑に対し、メジャーリーグのスター選手が参加しない等の理由から「野球はIOCに受け入れられにくい」とされている現状を考慮すると、野球が最終選考で落ちてしまうことがないように、その切り札として他スポーツが切り捨てられる可能性もある、そんな憶測もあるとか、ないとか・・。

エンブレム問題や会場建設についてのゴタゴタをはじめ、当初のローラースポーツとしての流れや、全日本ボウリング協会が声を挙げた“選考の不透明性”など、各団体・業界が関与できない部分での選考や決定など様々な動きがあるのも否めないような状況。

2020年東京オリンピックの追加種目は、2016年8月のIOC総会にて最終決定となる。
メディア露出や世間的な注目度など、サーフィン業界としては大変喜ばしく明るいニュースではあるが、今後の動向には引き続き注目していきたい。

以下、記者会見の模様や各団体の声明などを抜粋してご紹介。




日本サーフィン連盟「追加推薦種目の発表記者会見」

会見にはNSA(一般社団法人日本サーフィン連盟)の理事長、酒井厚志氏を始めとした関係者、オフィシャルサポーターを代表して大野修聖、大村奈央が出席。

■今後の活動について
2〜3年前から強化指定選手という枠を設け、そこから世界ジュニアの選考や大会前の合宿なども行なっており、今後も力を入れていく予定。

■会場について
具体的なことは何も決まっていない。
開催時期の夏に条件が良い場所をISAと協議し、決定にはIOCの意向も汲む必要があり、行政との調整・整備も必要。
現段階では、千葉、東京(新島)、神奈川、人口プールという選択肢があると言える。特に東京(新島)に関しては過去に「東京国体デモンストレーション競技」で開催した実績もある。

※人口プール建設については、9月18日〜19日にイギリスの『Surf Snowdonia』で開催されたコンテスト、『Red Bull Unleashed』を例に挙げ、建設費に関する質問には、参考例として土地抜きで約15億円という金額を回答。
(新国立競技場の総工費の上限は1550億円)

■サーフィンの競技人口について
資料上の参考値として、サーファー人口は世界で3500万人、そのうち競技人口は350万人。
日本では200万人、そのうち競技人口は20万人と言われている。

■サーフィンの魅力は
大野修聖
「1本の波の中で、自由に表現ができるスポーツ。チューブといって波の中に入ることもできるし、空中を飛ぶこともできる。美しいライン、難易度の高い技など、表現の自由さが魅力だと思う」

大村奈央
「採点の分かりづらさという課題はあるものの、簡単に考えれば凄い演技をした人に高い点数が付く。サーフィンを知らなくても、凄いと思った人に高い点が付くはずなので観客としての魅力・面白さもあると思う」

■強化選手として、5年後に向けた待遇改善点などの希望は?
大野修聖
「若い世代も含めた選手の強化。世界でも通じるようなコーチング、キャンプなど、世界レベルでの強化待遇を希望。業界全体の流れとしても、そうなっていくと思う」

大村奈央
「選手の育成はもちろん、これまではレジャーとしてのサーフィンばかりが取り上げられてきたが、競技としても、もっと取り上げて欲しい。開催国での盛り上がりも選考基準の1つという点から、追加種目として最終決定されるよう共に頑張っていきたい」



なお、今回の東京オリンピックの追加種目の発表にWSL、ISAが声明を出しています。


■WSL コミッショナー キーレン・ペロー

「私達は2020年の東京オリンピックでサーフィンが選ばれたことを喜んでいる。過去数年、サーフィンは国際的な成長を遂げている。世界的に認められたアスリートと熱狂的なファンがいるし、オリンピックの舞台に上がるには理想的なスポーツ。何十億ものオリンピックの視聴者の前で世界を代表するサーファーが演技を披露することに今から興奮しているよ」

■ISA 会長 フェルナンド・アギーレ

「2020年の東京オリンピックでサーフィンが選ばれた今日は、私達のスポーツ、世界的なサーフィンコミュニティーの特別な瞬間。
ISAは今までオリンピックへの参加という目標に向かってきた。この道のりには様々なことがあり、素晴らしい波にも恵まれたよ。私達は2020年の東京オリンピックでの試合が想像以上の価値をもたらし、サーフィンをライフスタイルとして認識してくれるだろうと考えて興奮している。この素晴らしい機会を与えてくれた東京オリンピックとIOCに深く感謝したい。私達はこのスポーツと試合によって得られる意味に大きな誇りを持っている。このオリンピックの夢を達成するため、今後も実現に向けて他と連携して活動したい」

「サーフィンはとても素晴らしい。特に若い人達の間で魅力があるとされ、世界的に成長している。私達はこのダイナミックなエネルギーを持つスポーツと世界中にいるファンのおかげで東京オリンピックは多くの恩恵を受けると信じている。サーフィンとは人生に新しい要素をもたらすライフスタイルの一面もある。今回のオリンピックでの演技を観戦、もしくはライブ中継で放送することによって新たなファンも増えるでしょう」

「本日の発表によって私達は新たな前進、取り組みを行なう。リオオリンピックのIOC総会はとても重要な期間となり、可能な限り開催に向けての問題解決を提案する。そして、東京オリンピックとIOCが密接に連動することを楽しみにしているよ」


日本サーフィン連盟が選考する「チームジャパン強化指定選手」には、今回会見に参加した大野修聖、大村奈央のほかにも、大原洋人、大橋海人、新井洋人、仲村拓久未など既に国内外で高い実績を持つ候補選手をはじめ、将来を期待されている若い選手が多く選考されている。
東京オリンピックまであと5年。その舞台を夢見る多くの選手にとって、最高のステージとなってくれることを期待したい。


日本サーフィン連盟
http://www.nsa-surf.org/

ISA公式サイト
http://www.isasurf.org/

WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/


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