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JAWSにチャージした65歳



「チャレンジするのに年齢は関係無い!」
そんな言葉がピッタリと当てはまる行動をした一人のサーファーのインタビューを今回はお伝えします。

彼の名前はゲーリー・リンデン。65歳。
かつては、あのAl Merickよりも有名だったLindenのシェイパーであり、現在はBWT(ビッグウェーブツアー)の役員を努め、自らもビッグウェーブサーフィンを追求。

1月下旬、グリーンアラートまで発令された世界有数のビッグウェーブスポット、マウイ島・JAWSでの『Pe’ahi Challenge』は条件を満たせずに見送られましたが、フリーサーフィンには十分過ぎる。いや、過去最高レベルの素晴らしいコンディションに恵まれ、ゲーリーはその波にチャレンジ。

ラインナップにはマウイ島ローカルで女性を代表するビッグウェーバー、ペイジ・アルムスも並び、年齢性別を問わず、自然が生み出した美しく巨大な波の力を身体で感じていました。


■WSL
初めてのJAWS。それにはどんな経緯と経験がありましたか?


■GL
以前にグレッグ・ロング(カリフォルニアを代表するビッグウェーバー)と話をしていた時、彼は言ったんだ。
「オレはゲイリーがあの波で出来ると思わないよ。自分でさえ、全ての波で最大の運動能力を出し切っているんだ」とね。
それが心の奥にあったけど、ツアーの舞台になっているビッグウェーブは全て乗ってきたし、生きている内に成し遂げたいリストにJAWSもあったんだ。

今年は腰痛や、心臓など健康面での問題を抱えていたし、まさかJAWSに入ることは無いだろうと思っていた。
でも、あの日、一日の荷物をバッグに詰め、その中にはウェットスーツとベストが入っていた。
波を見ながら、何故かもし自分がアウトにいたらどのピークにいれば良いだろうと考えていたんだ。
波を良く読むことが出来たし、どこが悪いポジションかも理解出来たんだよ。

そこには友人のベン・ウィルキンソンがいた。彼はBWTの選手の一人で、正真正銘のビッグウェーバー。
彼が「ゲイリー、波に乗りたいの?」と聞くから、「ボードが無いんだ」と返した。
そうしたら、「オレのを一本貸してあげるよ」と...。
彼は260ポンド(約117キロ)もある巨漢だし、ボードは古くて分厚い。そのボードでターンが出来るかどうかも不安だったけど、少なくともこれで条件は揃ったのさ。

「じゃあ、一本だけ乗って戻って来ようかな」と言ったら、「本当に乗りたいのかい?ゲイリー」と彼。
ここで初めて、’これはチャンスだ。今までやろうとしていたことをするなら、それは今だ!」と思ったんだ。

準備をしてパドルアウト。
長居するつもりは無かったので、素早く良い場所で待つべきだと行動し、早速良い波に乗ることが出来た。
ボトムまでメイクして最後まで良いウォールを駆け抜けたのさ。
JAWSの難しい部分であるバレルにも合わせることが出来たかな。さすがにあのボードは大き過ぎて本当にマニューバーを描けたとは言えないけど、十分満足することは出来た。成し遂げた充実感。最高の気分だったよ。


■WSL
ギャラリーの反応はどうでした?


■GL
自分が波に乗ったことで、そこにいた全ての人が感動して楽しんでくれたと思う。
65歳は多分あそこにパドルアウトした最年長だよね。ツアーでイベントを運営する立場だし、今回のことが皆に知れ渡るのはとても嬉しいことだよ。皆の大きな愛があって達成出来たことでもある。
65歳。人生はまだこれからさ。後輩達への励みにもなったんじゃない?


■WSL
BWT設立の道のりを教えてください


■GL
ビッグウェーブがスポーツと認められていないことに気付いたんだ。
40歳以上のサーファーにとってのライフスタイルみたいなものだったのさ。彼らは長いボードを購入する資金に恵まれ、仕事を休んで大きなウネリを追いかけることが出来る。
ビッグウェーブにトライするにはフレキシブルなスケジュール調整が必要だから、若い子達は興味を持たずスポーツとしても成り立たなかった。
私達は運動選手として優れている18〜30歳のサーファーがビッグウェーブの限界に挑戦するところを見たことが無かったんだよ。だから、ツアーでの経験を活かし、「ビッグウェーブサーフィンをスポーツとして確立するために支援したい」と声を上げたんだ。


■WSL
ビッグウェーブサーフィンにハマったきっかけは?


■GL
自分は哲学的なアプローチでビッグウェーブサーフィンを考えている。
その意味とは、サイズに関係無く、私達サーファーは常にその日の一番大きな波を待つということさ。
それが2ftでも3ftでも関係無い。
今、外に出ても、とにかくデカイのを待つつもりだよ(笑)

自分にとって最初の大きな波は1969年のリンコン。同じ日にグレッグ・ノールがマカハでサーフィンしたと言っていたけど、その日のリンコンはとにかく大きかった。
遅いスタートになったけど、あれがビッグウェーブサーフィンを追求するきっかけになったのさ。
あの時もそう。どこの海で入っても哲学的に最大の波に乗ろうとしていたね。


■WSL
あの日はペイジ・アルムスも入っていたけど。彼女のことを見ていましたか?


■GL
丁度、チャンネルの良い場所で見ていたよ。
ペイジ・アルムスは素晴らしいバレルをメイクしていたね。朝の潮が少し上げている時間帯。でも、小振りながら良いバレルが姿を現していたんだ。
彼女が乗ろうとしていた時、最初は誰か分からず、男性だろうなと思っていた。セカンドセクションを抜けて完全に姿が見えなくなり、バレルから出てきた時、「あれはペイジだろ!」って誰かが興奮していたのさ。あの時は皆がハッピーだったと思うよ。
恐らく、彼女のバレルはウィメンズ史上最高。新しい世界を拓いたと言える。彼女がそこで費やした多くの時間、知識が報われたのさ。




■WSL
あなたがビッグウェーブに乗ることを家族はどう感じていますか?


■GL
41年連れ添った妻は、もう慣れているよ。
多分、私が人生で何かを追求して報われているということを楽しんでいると思う。サーファーとして、心が通じ合う仲間とストークする気持ちをシェアするという価値を理解してくれている。もし、不機嫌な時でもサーフィンすれば満足して陽気になって家に帰ってくるし、彼女は楽だと思うよ。

長女に関しては、家族の誰よりも神経質になっている。
ある感謝祭でのディナーのこと。彼女はサンフランシスコに住んでいるんだ。
その日はマーベリックスでサーフィンしていたんだけど、目の上にボードがヒットして緊急治療室に運ばれ、8針も縫うハメになったのさ。おかげでディナーに遅れて今でも家族のジョークのネタに使われているよ。

私が不必要なリスクを取らないと信頼はされていると思う。
今回、JAWSで一本乗るためにアウトに出たけど、ギネス世界記録に挑戦しているわけではないしね。
基本的に家族はそれを止めて欲しいというより、誇りに思っているんじゃないかな。


■WSL
トレーニングはしていますか?


■GL
今までトレーニングはしたことが無かった。
サーフボードのシェイプは肉体労働だから、それが体型の維持に繋がっているんだと思うよ。
オーシャンサイド(南カリフォルニア)に家と工場があり、近くのビーチブレイクでどんなコンディションでもショートボードで海に入る。毎日入っていれば波を読むということを学べるのさ。ビーチブレイクは風が入ると良いライドをするのが難しくなる。ウネリを読むこと、速いパドルと迅速な対応はとても重要だと思う。だから、ショートボードに乗るんだ。
クローズアウトセクションでターンをすることはスピードの出し方の良いトレーニングになるのさ。

メンタル的には、どれだけ夢中になれるかが大切だと思う。考えること。夢見ること。
あなたが自分自身を奮起させて乗り越えなければいけない場面があった時、過去の恐怖を上回る良い気持ちを思い出してみれば良い。

さっき、いくつかの健康上の問題を述べたけど、今は理学療法士の指導を受けてストレッチとコアトレーニングをしている。
ニック・ランブ(スペイン・バスクの「Punta Galea」で優勝)や、他のサーファーがジムでやっているのを見て肉体的にも鍛えたいと思っているんんだ。
特にコアトレーニングは誰にでも有効だと思う。

でも、一番大切なのは、自分の気持ちだよね。自分自身に出来ると言い聞かせると本当に出来てしまうんだ。
私がボードを削っている若い子には、「じゃあゲイリー、一ヶ月サーフィンしないで、いきなりビッグウェーブに乗ることが出来るのかい?(笑)」ってジョークを言われることもあるけどね。
常に心を集中し続けているべきさ。


■WSL
今までで最もヘビーなワイプアウトの記憶は?


■GL
メキシコの’Pascuales’という波でかな。
ボランティアでメキシカン・ナショナル・サーフチャンピオンシップのジャジをしに行ったんだけど、コンテストには大き過ぎて他へ移動したんだ。
午後になって戻ってみると大きなライトの波が姿を現していた。もう暗くなる前だったし誰も入っていなかったのさ。
もうじっとしていられず、一人でパドルアウトしたんだ。
アウトに出たら、今までで最もヘビーな波が待っていたよ。ラインナップに並び、ドロップしてボトムまで降りたまでは良かったんだけど、リップが腕に当たり、更に肩がアゴに当たってノックアウト...。
つまり、自らの肩が致命傷になったんだ。水中で意識がもうろうとなり、それでも’なんて深いんだ’と思ったのを覚えている。
生きているからそれは武勇伝になったけど、溺れかかったよ。
これが最もヘビーなワイプアウトの経験さ。


■WSL
今後のビッグウェーブツアーは?


■GL
このままの勢いを維持してコンテストの正しいコールと開催を願っている。
最終的な目標は、スポーツとして認められること。
サーフィンを一般のスポーツと同じ地位として熱心に活動しているこの団体で働く機会を与えられ、本当に感謝しているよ。

BWT(ビッグウェーブツアー)の北半球レッグは、マウイ島・JAWSでの『Pe’ahi Challenge』、メキシコ・トドスサントスでの『Todos Santos Challenge』が残っており、更に30周年を迎えたスペシャルイベント『Quiksilver Eddie in Memory of Eddie Aikau』もスタンバイ。
3つのビッグウェーブイベントは2月28日まで開催の可能性があり、大きなウネリが入るのを厳粛に待っています。

WSL公式サイト

photo: WSL Covered Images

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